第7次エネルギー基本計画案に反対 パブリックコメント

「第7次エネルギー基本計画」の案に対し、反対の意見を提出しました。今も収束していない東京電力福島第1原発事故やそこから得たはずの教訓も忘れたかのような「原発回帰」の計画案です。経済産業省(資源エネルギー庁)のパブリックコメント締め切り日(1月26日)に滑り込みでしたが提出しました。次世代にツケを回すような政策を許していけないと思います。以下掲載します。

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原発回帰を鮮明にしている第7次エネルギー基本計画案には反対します。

まず、東日本大震災における東京電力福島第1原発の事故で、私たちは原発の持つ恐ろしさを嫌というほど学んだはずです。日常的な放射線漏れなどの懸念があるだけでなく、いざ大事故が起きた場合には、私たちの命や健康、暮らしや人生全体にまで甚大で、取り返しのつかない被害をもたらします。その福島で得た反省と教訓から震災後、第6次までのエネルギー基本計画においては「可能な限り原発依存度を低減する」と明記されてきたはずです。

しかしながら、今回の新計画案はこの重要な文言を撤回。震災前の「安全神話」が復活したかのように、原発の「最大限活用」が盛り込まれています。日本国内の原発は私が指摘するまでもなく、活断層や火山の近く、海沿いに立地されており、津波だけでない様々な天変地異により大規模に損壊する可能性があります。さらにテロや外国からのミサイル攻撃の対象となって、損傷した原子炉が暴走するといった危険も否定することはできません。北朝鮮の核・ミサイル開発を危険視するのであれば、いつ核爆弾と同様の結果をもたらすかもしれない原発についても、その「危険」を直視するべきだと考えます。

また、事故があった場合の避難計画についても、実際には役に立たないだろう机上の空論にすぎないことが、能登半島地震の被害で明らかになりました。こうした状況は、最近再稼働した中国電力島根原発がある松江市など各地でも同様ではないでしょうか。

失敗から学ばない者は、再び同じ過ちをおかします。そうした観点から原発の再稼働や利活用、ましてや新設・建て替えなどではなく、一刻も早い脱原発を実現するべきであり、エネルギー基本計画においても脱原発を明記し、そのための道筋を示すべきだと考えます。

原発の再稼働や利活用を主張する際の根拠となっているのは、気候変動対策としての脱炭素や経済効率性、エネルギー安定供給(エネルギー自給率、経済安全保障)などですが、これは原発回帰を正当化する根拠にはなり得ないと考えます。

まず脱炭素と経済効率性ですが、脱炭素のためには再生可能エネルギーの拡大が最も有効なはずです。再エネはかつて発電コストが高いと言われましたが、現在は、蓄電池と組み合わせても最も安価な電源だとされています。

計画案は2040年度に電力量全体に占める原発の比率を2割程度としていますが、原発建設に20年程度要することを考えれば、これが意味するのは既存原発の「最大限活用」です。60年を超えるような老朽原発の利用は、安全性が担保されていない、全く未知の領域であり、それを続けるためには膨大な維持費用を要するはずです。

第7次の計画案に記述されているように、太陽光発電では、薄くて軽く折り曲げられる次世代太陽電池「ペロブスカイト型」も開発されており、発電量を拡大することはまだまだ可能です。再エネには太陽光発電以外に、小水力や地熱発電、浮体式洋上風力発電などもあります。

老朽原発の維持に膨大な費用を注ぎ込むのであれば、それを再エネ拡大や新たな再エネ技術の開発に充て、一刻も早い社会実装を実現するべきです。原発の新設・建て替えについては、完成するのがどんなに早くても20年程度先ですから、喫緊の温暖化対策・気候変動対策の役に立たないのは明白です。第6次計画にある「再生可能エネルギーについては、主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組み」等の文言を第7次計画にもきちんと盛り込み、最優先で取り組むべきです。

エネルギー安全保障や安定供給についても、国内で自己完結する地産地消の再エネを拡大させればよいはずです。原発による発電は規模が大きいため、事故などでいったん停止でもすれば、その影響は甚大かつ広範囲にわたり、その面ではとても「安定」供給とは言えません。既に東日本大震災等で経験済みです。

そもそも原発は「トイレのないマンション」と言われるように、核廃棄物の最終処分場の場所さえ決まっていない状態です。その状態で原発を再稼働・利活用し、核のごみを増やし続けることは、次世代の人々に対して無責任極まりないことですし、そうした原発の再稼働・利活用が、安全・安定で持続可能なエネルギー政策だとは思えません。さらに今後の政策はあらゆる面において、世界第4位の経済大国となり、近々第5位になってしまう日本の経済力や一層進む少子高齢化に照らして持続可能なものでなければならないと思います。原発がその面からも持続可能なのか大いに疑問です。