今、むのたけじに学ぶ

  私の応援団の一人、武野大策さんは、2016年に101歳で亡くなった反戦ジャーナリスト・むのたけじ(武野武治)さんの次男です。「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」実行委員会の共同代表をされています。「『むのたけじ』って、名前は知っていても、どんな人だったか、皆あんまり知らないでしょ」と話す武野さんは現在、お父さんについて学ぶ学習会の立ち上げを計画しています。私も落ち着いたらぜひ参加したいと思っています。

アジア太平洋戦争中、従軍記者として戦地に送り込まれた当時・新聞記者のむのさんは、現地で戦争の実態を目撃。その著書には、戦争の本質や兵隊自身では語れない真の姿が記されているように思います。近くの本屋さんでも手に入る本に、7年前に刊行された『日本で100年、生きてきて』(朝日新書)があります。

むのさんはこの本の巻頭言で、市民が声を上げることの必要性を指摘。戦争反対だと「意思表示をしないと権力は『民衆は反対していない』と勝手な判断をするからやめるわけにはいかない」と述べています。本編では、戦時中に旧日本軍がやった乱暴・殺害・放火などの「残虐行為」に関して「戦場に行けば3日で人間変わっちゃう。(中略)ふるさとに帰れば心優しい農民を、獣以下に変えちゃうの」と回顧。「戦争というのは(中略)価値観の土台をめちゃくちゃにしちゃう」「人間が人間でなくなるのよ」とも記しています。

ロシアのウクライナ侵攻から約80日。多くの市民や兵士が犠牲となっています。そこではロシア軍による虐殺行為が行われたとも言われています。結局、何十年たっても戦争の実態は何ら変わっていないと感じます。「そういうことを避けられない戦争そのものをなくさなければならない」「人間主義の原点は、戦争をやらせないこと」という、むのさんの言葉は重く響きます。

戦争に臨む政府の姿勢にも言及しています。「戦争をやるときは敵国を欺くけど、自国民も2倍も3倍も欺く」「ウソをつかないとやれないのが戦争なんですよ」。これもまるで、今ウクライナにおける戦争を予期していたかのような記述です。

更に地球温暖化問題にも触れ、「全人類の問題として取り組まないとだめでしょ。戦争なんてやっている場合じゃないんだ」「今は、人類が滅びるか滅びないかの境目だ」と強調しています。

人の命を尊び、地球環境を大切にする立場に立てば、欧米諸国が武器を提供し、ウクライナ政府に戦闘を続けさせることが本当にいいことなのか。もしロシアが現実に核兵器を使えば、日本政府がポツダム宣言を受諾しなかった結果、原発を投下されたヒロシマ・ナガサキの二の舞になってしまわないか。私たちが守るべきものは何なのか。現状は何のために戦っているのか。むのさんが生きていたらこの戦争をどう評価し、日本はどうすべきだと考えたでしょう。私たち自身が真剣に考えなければいけないと感じます。